褥瘡(床ずれ)は、一度できてしまうと治癒までに時間を要し、本人の苦痛だけでなく、介護者や医療スタッフの大きな負担にもつながります。その一方で、日々多くの利用者・患者様に対応している現場では、理想的なケアをしたくても、人手や時間が足りず十分な褥瘡予防が行えないという課題も少なくありません。
このページでは、褥瘡の基礎知識から予防のための基本ケア、できてしまったときの対応、そして褥瘡ケアの負担を軽減する「見守りシステム」の活用まで、順を追って解説します。現場で褥瘡ケアに取り組む方の一助となれば幸いです。
褥瘡とは、長時間同じ姿勢で寝ている・座っている状態が続くことで、皮膚やその下の組織が持続的に圧迫され、血流が滞り、最終的に組織が損傷・壊死してしまう状態を指します。特に骨が突出している部位では、圧力が集中しやすく、皮膚が薄く脆弱な高齢者や、寝たきりの方に多く見られるのが特徴です。
初期にはうっすらとした発赤や違和感から始まり、そのまま放置すると水疱、潰瘍、深い組織欠損へと進行していきます。重症化すると感染症を引き起こし、全身状態の悪化につながることもあるため、「できてから治す」ではなく「できる前に予防する」視点が欠かせません。
褥瘡が発生する主な原因は、「圧迫」「ずれ(シアー)」「摩擦」の3つです。これらが単独または複合的に作用することで、皮膚とその下の組織にダメージが蓄積していきます。
まず「圧迫」は、マットレスと骨が皮膚を挟み込むような力が持続することで、毛細血管が押しつぶされ、血流が阻害される状態です。血液が十分に届かない時間が長くなるほど、組織は酸素や栄養不足に陥り、壊死を起こしやすくなります。
「ずれ」は、ベッドの背上げ時などに上半身が下方へ滑ろうとするときに生じる力です。皮膚の表面はシーツに引っ張られたまま、皮膚の下の組織だけが移動しようとすることで、血管が曲がったりねじれたりし、深部の組織損傷を引き起こします。
「摩擦」は、寝返りや体位変換の際に、皮膚がシーツや衣類とこすれ合うことで発生します。摩擦そのものが直接の壊死を起こすわけではありませんが、表皮を傷つけバリア機能を低下させることで、より褥瘡ができやすい皮膚環境をつくってしまいます。
褥瘡は、体圧が集中しやすい「骨の突き出た部分」に好発します。仰臥位(仰向け)、側臥位(横向き)、座位など、姿勢ごとにリスクの高い部位は異なりますが、代表的な部位は次の通りです。
仰向けで長時間過ごす方では、特に仙骨部とかかとが要注意です。横向きで過ごすことが多い方では、大転子部や外くるぶしなどに体圧が集中しやすくなります。実際のケア現場では、身体のイラストなどを用いながら、「どの姿勢でどの部位に負担がかかりやすいか」を可視化してチームで共有することで、より実践的な褥瘡予防につなげることができます。
褥瘡は誰にでも起こり得ますが、特にリスクが高いのは次のような条件を複数抱えている方です。
こうしたリスクが重なっているほど、短時間でも褥瘡が生じる可能性があります。現場では、「動けるかどうか」「栄養状態」「皮膚状態」「失禁の有無」などを総合的に評価し、褥瘡ハイリスク者を早期に抽出することが重要です。
褥瘡は、皮膚のどの層まで損傷が及んでいるか(深達度)によってステージ分類が行われます。一般的には、ステージⅠからステージⅣに加え、「深部損傷褥瘡(DTI)」があり、それぞれ見た目や対処法が異なります。
イラストや写真を用いると視覚的に理解しやすくなりますが、ここでは文字でイメージしやすいように特徴を整理します。
ステージが進むほど治癒までに時間がかかるだけでなく、感染や疼痛などの合併症リスクも高まります。そのため、ステージⅠの段階で早期に気づき、適切な予防・ケアへつなげることが極めて重要です。
褥瘡の初期サインは、はっきりとした傷や穴ではなく、「なんとなく赤い」「少し固い」「触ると痛い」などの微妙な変化から始まります。特に、体圧がかかりやすい部位において「押しても色が消えない発赤」がないかをこまめにチェックすることがポイントです。
チェックの際には、明るい照明下で皮膚の色や質感を確認するとともに、左右差を比べることも有効です。「片側だけ赤い」「片側だけ硬くなっている」など、左右の違いが手掛かりになることもあります。また、利用者本人が訴える「痛い」「ヒリヒリする」「違和感がある」といった感覚も重要なサインです。
ステージⅠの段階で気づくことができれば、体位変換や体圧分散寝具、スキンケアの見直しなどにより、深刻な褥瘡へ進行する前にケアを軌道修正することが可能です。日々の観察の中で、小さなサインを見逃さない仕組みづくりが求められます。
褥瘡予防の基本は、「体圧を分散する」「皮膚を守る」「栄養状態を整える」という3つの柱から成り立ちます。どれか1つだけを行えばよいのではなく、利用者一人ひとりの状態に合わせて、3つのケアを組み合わせて実施することが重要です。
もっとも基本となるのが、体圧を一点に集中させないための「体圧分散ケア」です。適切な寝具の選定と定期的な体位変換を組み合わせることで、皮膚や深部組織への負担を軽減できます。特に、寝返りが自力でできない方や動きが少ない方では、「どの姿勢で長時間過ごしているか」を把握したうえで体圧管理を行うことが求められます。
体圧分散寝具には、ウレタンフォーム、エアマットレス、ゲル素材、低反発・高反発など様々な種類があります。選定の際には、以下のような観点を総合的に考えることが重要です。
エアマットレスは体圧分散性能に優れる一方で、設定や管理に一定の知識や手間が必要な場合があります。ウレタンマットレスは扱いやすくコストも抑えやすい反面、利用者の状態によっては体圧分散が不十分となることもあります。専門職(WOCナース、理学療法士など)と連携しながら、個々の利用者に適した寝具を選ぶことが大切です。
体位変換は「2時間ごとに仰向け・右側臥位・左側臥位を回す」といったルールだけでなく、「どの角度でどの部位にどれだけ荷重がかかるか」を意識したポジショニングが重要です。例えば、完全な90度の側臥位では大転子部に体重が集中しやすいため、30度〜40度程度の「斜め側臥位」を用いることで、体圧をより広い面積に分散できます。
また、膝の間や足首の下、背中とマットレスの隙間などにクッションを挿入することで、骨突出部にかかる圧力を軽減できます。イラストでは、
などを示し、スタッフ間で共通イメージを持てるようにすると効果的です。実際の現場では、利用者の状態に合わせてポジショニングを微調整しながら、「楽な姿勢」「呼吸がしやすい姿勢」を保つことも忘れてはなりません。
皮膚そのものを強くし、外からの刺激に耐えられる状態に整える「スキンケア」も、褥瘡予防には欠かせません。特に高齢者の皮膚は乾燥しやすく傷つきやすいため、日常的な洗浄・保湿・保護のケアが重要になります。
洗浄の目的は「汚れを落とすこと」ですが、同時に「皮膚のバリア機能を守ること」も考慮する必要があります。強い力でゴシゴシこすったり、刺激の強い石けんを頻繁に使用したりすると、かえって皮膚を傷つけてしまうことがあります。
特に骨突出部や摩擦が生じやすい部位では、洗浄後の保湿ケアをルーティンとして組み込むことで、日常的な褥瘡予防につながります。
尿や便による皮膚の湿潤や汚染は、褥瘡発生の大きなリスク要因です。失禁がある場合は、こまめなおむつ交換や陰部洗浄に加えて、バリアクリーム(撥水性の保護剤)などを利用し、皮膚表面を保護することが大切です。
おむつ交換時には、強く擦って拭き取るのではなく、汚れをやさしく取り除いたうえで、必要に応じて保護クリームを薄く均一に塗布します。また、おむつのサイズやフィット感が不適切だと、摩擦や蒸れの原因になるため、おむつ選びや装着方法にも注意が必要です。
どれだけ体圧分散やスキンケアに取り組んでも、栄養状態が不良だと皮膚や組織の修復が進まず、褥瘡のリスクは高いままになってしまいます。特に高齢者では、食欲低下や嚥下機能の低下などにより、知らないうちに低栄養状態に陥っていることが少なくありません。
褥瘡予防や治癒のためには、以下のような栄養素が重要とされています。
管理栄養士や医師と連携しながら、利用者の体重変化や食事摂取量を定期的に確認し、必要に応じて栄養補助食品や経腸栄養なども検討することが大切です。
褥瘡予防のための食事では、「たくさん食べさせる」ことだけが目的ではありません。むせやすい方に無理に量を増やすと誤嚥のリスクが高まるため、食形態や食べる速度、姿勢の工夫も含めて総合的に考える必要があります。
栄養管理は医療・介護・栄養の連携が重要です。褥瘡ハイリスクの方には、早めに栄養評価を行い、チームで予防計画を立てることが求められます。
どれだけ予防に力を入れていても、状態の変化や急な体調不良などにより、褥瘡が発生してしまうことはあります。そのような場合でも、「見て見ぬふり」をせず、早期に気づいて適切な医療・ケアにつなげることが大切です。
褥瘡が疑われる、あるいはすでに褥瘡がある場合には、以下のような状況では速やかに医師・看護師へ相談する必要があります。
これらは感染や重症化のサインである可能性が高く、自宅や施設だけの判断で対処し続けるのは危険です。早めに医療機関や訪問看護へ相談し、適切な評価と治療方針を決定してもらうことが重要です。
褥瘡のケアにおいて「洗浄」は非常に重要なステップです。創部表面の汚れや不要な浸出液を取り除くことで、感染リスクを減らし、治癒を促進する環境を整えます。ただし、強すぎる洗浄や不適切な方法は、かえって組織を傷つけてしまう可能性があるため注意が必要です。
洗浄の頻度や方法は、創部の状態や治療方針によって異なります。医師・看護師の指示に従い、ケアに関わるスタッフ全員が同じ方法で実施できるように情報共有することが大切です。
ドレッシング材(創傷被覆材)は、創部を外部刺激から守り、適度な湿潤環境を保つことで、治癒を促進する役割を担います。ガーゼだけでなく、ハイドロコロイド、ハイドロファイバー、フォーム材、アルギン酸塩など、多様な種類があり、創部の状態(深さ・浸出液量・感染の有無など)に応じた選択が求められます。
例えば、浸出液の少ない浅い創にはハイドロコロイド、浸出液が多い創には吸収力の高いフォーム材やハイドロファイバーが用いられることがあります。感染が疑われる場合には、抗菌成分を含むドレッシング材を検討することもあります。
ドレッシング材の選択は医師やWOCナースの判断に基づいて行われることが多いため、家庭や施設では、「どのような目的でそのドレッシング材が使われているのか」を理解し、指示通りの交換頻度と手順を守ることが重要です。
褥瘡予防の理想形は、リスクの高い利用者一人ひとりに対して、こまめな体位変換と適切な体圧分散、スキンケア、栄養管理を組み合わせて行うことです。しかし、現実の現場では「頭ではわかっていても実践が難しい」という声が多く聞かれます。
例えば、2時間ごとの体位変換は褥瘡予防の基本とされていますが、夜間帯はスタッフ数が限られ、巡回や他のケア対応と並行して実施するのは大きな負担です。「今、本当に体位変換が必要な方は誰なのか」「どの利用者を優先すべきなのか」が分かりにくいと、見逃しや偏りが生じてしまうこともあります。
こうした褥瘡ケアの現場が抱える課題を、テクノロジーの力でサポートするのが「見守りシステム」です。体圧センサーや離床センサー、睡眠・覚醒のモニタリング機能などを備えた見守りシステムを活用することで、「どのタイミングで、どの利用者に、どのケアを行うべきか」を見える化し、限られた人員でも質の高い褥瘡予防を行いやすくなります。
褥瘡ケアに関連する見守りシステムは、単に「アラームを鳴らす装置」ではなく、日々のケアの優先順位付けや振り返りに役立つ情報基盤として活用できます。ここでは、代表的な機能とその貢献ポイントを整理します。
体圧センサーを搭載した見守りシステムでは、マットレス上の体圧分布をリアルタイムに把握し、同じ姿勢が長時間続いている場合や、特定の部位に圧力が集中している場合に、体位変換のタイミングを自動で通知することができます。
これにより、
などの効果が期待できます。体位変換の必要性を「感覚」ではなく「データ」で把握できるようになる点は、現場の大きな助けとなります。
見守りシステムの中には、入居者の睡眠・覚醒状態をモニタリングし、夜間の中途覚醒や日中の睡眠傾向などをデータとして蓄積できるものもあります。これにより、
といった活用が可能です。生活リズムが整うことで活動性が高まり、結果的に褥瘡リスクの低減にもつながると期待されています。
離床センサーは、ベッドからの起き上がり・立ち上がり・離床を検知する仕組みで、転倒・転落リスクの高い方の見守りに役立ちます。褥瘡ケアの観点から見ると、
といったメリットがあります。離床データを活用することで、「動いている人」と「動けていない人」を見える化し、褥瘡リスクの高い利用者に対して重点的なケアを行うことが可能になります。
褥瘡ケアのために見守りシステムを導入する際は、機能の多さだけで選ぶのではなく、「自施設の環境や運用に合っているかどうか」を重視することが重要です。環境に合わないシステムを導入してしまうと、かえってアラーム対応に追われて業務負担が増えてしまう恐れもあります。
選定時には、次のようなポイントをチェックすると良いでしょう。
また、実際に現場で運用する介護スタッフ・看護師が使いやすい画面構成や操作性も重要なポイントです。「誰が見ても直感的に分かるインターフェースかどうか」は、導入後の定着度を左右します。
本サイトでは、褥瘡管理における介護者の負担を大きく軽減するための、施設向け見守りシステムを提供する「株式会社エクセルエンジニアリング」のソリューションを紹介します。
ベッド上の入居者の体圧をセンサーで計測し、そのデータをもとに褥瘡発症リスクを可視化・通知することで、「今どの利用者を優先してケアすべきか」を見える化します。体位変換の適切なタイミングを把握しやすくなり、夜間を含めた褥瘡ケアの質向上と業務負担軽減の両立が期待できます。

画面上に表示される体圧分布図から、どの部位にどれだけ圧力がかかっているかを一目で確認できます。体位変換が必要な利用者や、特定の部位への負荷が高まっている利用者を素早く把握できるため、スタッフは優先度の高いケアに集中しやすくなります。
体圧の大きさや分布は色分けされた図として表示され、時間の経過とともに変化する様子を視覚的に確認できます。一定時間以上同じ部位に高い圧がかかっている場合には、体位変換のタイミングを判断しやすく、過不足のないケアにつながります。
複数のベッドを一覧画面で確認できるため、フロア全体の状況を俯瞰しながら、どの利用者にケアの優先度が高いかを判断できます。ナースステーションなど、スタッフが集まる場所からまとめて状態確認ができることで、夜間帯など少人数体制でも効率的な褥瘡予防が可能になります。
| 会社名 | 株式会社エクセルエンジニアリング | |
|---|---|---|
| 一般的名称 | 体動センサ | |
| 一般医療機器・届出番号 | 13B3X10376000001 | |
| 所在地 | 東京都千代田区神田小川町2-12-14 晴花ビル9階 | |
| 電話番号(問い合わせ先) | 03-5280-7120 | |
| 公式HP | https://www.excel-jpn.com/ | |
褥瘡は、一度できてしまうと利用者本人の苦痛が大きいだけでなく、介護者や医療スタッフにとっても大きな負担となる疾患です。だからこそ、「圧迫」「ずれ」「摩擦」といった原因を理解し、体圧分散ケア・スキンケア・栄養管理という3つの基本ケアを組み合わせて予防に取り組むことが重要です。
一方で、現場では人手不足や夜間帯の限られた体制の中で、理想的な体位変換や観察を続けることが難しいという現実もあります。そのギャップを埋める手段のひとつが、体圧センサーや離床センサーを備えた「見守りシステム」です。データに基づいて体位変換やケアのタイミングを判断できるようになることで、褥瘡ケアにかかる業務負担を減らしつつ、入居者の安全性とQOL向上を両立しやすくなります。
褥瘡は「できてから治す」よりも「できる前に予防する」ことが何より重要です。日々の観察や基本ケアにテクノロジーを組み合わせながら、利用者と介護者の双方にとって負担の少ない褥瘡ケアの仕組みづくりを検討してみてはいかがでしょうか。
入居者が寝たきりの方か、比較的元気な方かによって、必要な見守りシステムの機能は異なります。そのため、施設が受け入れている入居者に応じたシステムを選ぶことが大切です。ここでは、施設の種類ごとにおすすめの施設向け見守りシステムをご紹介します。

| 通知方法 | PC・スマートフォン・タブレット |
|---|---|
| センサーの 設置方法 |
センサーマットをベッド上に敷く |

| 通知方法 | スマートフォン・タブレット |
|---|---|
| センサーの 設置方法 |
居室内のベッドが見通せる壁または天井に専用アタッチメントで取り付け |

| 通知方法 | PC・スマートフォン |
|---|---|
| センサーの 設置方法 |
両面テープやネジで取り付け |
※参考用に心拍及び呼吸状況の表示が可能ですが、心拍計、呼吸計の代用はできません。